遺言書の破棄
先日、カフェでお茶をしていたとき、
お隣に座っていた方の会話が聞こえてきました。
「ちゃんとした人に聞いたけど、遺言書あっても、破棄すればいいんだよ。
破棄しても何の罪にも問われないし、大丈夫なんだって」
「それじゃ、遺言は無効ということなんだね」という会話。
見ず知らずの方々のため、お声がけするのは止めましたが、
思わずその場で否定したくなりました。
遺言書を破棄した場合、もちろんケースにもよりますが、
罪に問われることもありますし、
ペナルティを科されることもありますので、
何の問題もないわけではありません。
遺言書を破棄した場合、以下のようなペナルティ・責任が
科されることがあります。
1)民事上の責任:欠格事由
民法891条5号に、「相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造し、
破棄し、又は隠匿した者」は「相続人となることができない」
と定められています。
破棄した場合の全てのケースにおいて、欠格事由となるわけではありませんが、
自分に不利な遺言書を破棄した場合には、欠格事由に該当し、
相続人にはなりません。
そうすると、遺産分割協議に参加することはできませんし、
当然、遺産を受け取ることはできなくなります。
2)刑事上の責任:
遺言書を破棄した場合、私用文書毀棄罪に問われる可能性があります。
刑法259条は、「権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を
毀棄した者は、5年以下の懲役に処する」と記載しています。
遺言書は、この文書に該当すると考えられるため、場合によっては、
刑事上の責任を科される可能性もあります。