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ようこそ、弁護士 田中 三貴(たなか みき)のブログへ

日々思ったこと、皆様のお役にたてる情報などを書いていきたいと思います。

お時間のある時に、覗いてくださいね。


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遺言書が複数枚出てきた場合どうなる?

被相続人が亡くなり、その後、遺言書が何通も発見された場合、

どれが有効ですか?と聞かれることがあります。

遺言書は何通でも作成することができます。

それぞれの遺言書が要件を備えていれば、

遺言書としては、いずれも有効となります。

ですので、複数の遺言書が存在し、そのいずれもが要件を満たしている場合、

遺言書そのものの有効無効の問題ではなく、

いずれが優先するのかが問題となってきます。

 

①遺言書の内容が被らない場合

 例えば、前に作成した遺言書では預貯金の割り振りについて記載され、

 のちに作成した遺言書では不動産の割り振りについて記載された

 遺言書であった場合。

 これらの場合は、遺言書の内容が被らないため、いずれの遺言書も

 有効となります。

 

②遺言書の内容が被る場合

 例えば、前に作成した遺言書では、「自宅不動産については、

 Aに相続させる」と記載されていたにもかかわらず、

 のちに作成した遺言書では「自宅不動産については、Bに相続させる」

 と記載されていた場合

 このように、遺言書の内容が被り、相続させる者が異なるなどの場合には、

 優先関係が問題となってきます。

 

遺言書の内容が被り異なる場合には、遺言書の作成された日付を

確認することが必要です。

遺言者本人の最後の意思を尊重するものとして、

日付が最新のものが優先されることとなります。

遺言者が、前の遺言書をのちに作成した遺言書で取り消したものと

考えるものとされています。

そのため、のちに作成された遺言書が優先され、

上述の場合には、自宅不動産はBが相続することとなります。

 

また、複数の遺言書のうち、公正証書遺言と自筆証書遺言が混在していた

場合であっても、日付で優先関係を判断します。

一見すると、公正証書遺言の方が厳格に作成されており、

公正証書遺言の方が優先するようにも思われがちです。

しかしながら、いずれも遺言書であることに変わりはなく、

形式によって優劣が決することはありません。

そのため、形式が異なる遺言書であっても、

日付で優劣関係を決することになります。

 

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三重県でも急に暑くなりました。

先月半ば頃はアジサイがきれいに咲いていたのに、あっという間に気温が上昇



自己破産における2種類の手続き

自己破産の相談をしていると、管財事件になる可能性が高い案件が

増えてきたように感じます。

管財事件といってもピンとこない人が多いので、今回は、

自己破産における2種類の手続きの違いについて記載したいと思います。

 

自己破産手続きには、「同時廃止」手続きと「管財事件」の2種類があります。

いずれの手続きも、最終的に免責許可決定が出されたら、

債務の支払いが免責されることなる点では同じです。

しかし、それまでに至る過程(手続きの流れ)や費用等が異なります。

 

<違い>

津地方裁判所管内において、「同時廃止」手続きの場合、

現在、基本的には債権者集会が開かれないため、

裁判所に出頭することはありません。

これに対し、「管財事件」の場合には、債権者集会が開かれますので、

裁判所に出頭する必要があります。

また、債権者に一定以上の財産があった場合、その財産は破産財団に

組み入れられ、債権者に配当されることとなります。

以上のように、債権者集会が開催されたり、配当されたりすることもあり、

「管財事件」の方が「同時廃止」に比べ、期間が長期化しますし、

また「管財事件」では裁判所に出頭する必要があります。

 

費用面について比較すると、裁判所に納める予納金について

「同時廃止」と「管財事件」では異なります。

「同時廃止」の場合には、津地方裁判所の場合、

現在は約1万2000円とされています。

「管財事件」の場合、30万円(少額予納の場合は20万円)~と

されています(個人の場合)。

この金額は、債権者数や事情等により異なってきます。

 

<どういった場合に管財事件となるのか>

「管財事件」となるのは、主に以下の場合です。

ただし、事情によっては、要件に該当しない場合でも管財事件となる

場合があります。

 ・一定以上の財産がある場合(20万円以上の財産がある場合)

 ・個人事業主などの場合

 ・免責不許可事由があり、調査が必要な場合

 

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犯罪の被害者ら弁護士一貫支援 改正法成立

先月、中日新聞に以下の記事が出ていました。

 

「殺人や性犯罪などの遺族・被害者を事件直後から一貫してサポートする

「犯罪被害者等支援弁護士制度」の創設を柱とした改正総合法律支援法が

18日、衆院本会議で全会一致により可決、成立した。

公布後、2年以内に施行される。参院で先に審議されていた。

新制度は、事件後の早い段階から、

けがや精神的ダメージで働けなくなったり、

自力で弁護士を探すのは困難だったりする遺族・被害者を、

弁護士がワンストップで支える。

これまでの国の支援は弁護士費用の立て替えなどに限られていた。

改正で、日本司法支援センター(法テラス)に新制度の窓口を設置。

(1)被害届・告訴状の作成や提出

(2)加害者側との示談交渉

(3)損害賠償請求の提訴

(4)国の支援給付金の申請―などを担う弁護士を被害者らに紹介する。

捜査機関や裁判所、行政機関への付き添いもする。

利用に当たっては経済事情による要件を設けるが

「(これまで通りの)生活の維持が困難になる恐れ」として、

幅広く認定する見通し。

対象は、殺人や自動車運転処罰法の危険運転致死など

「故意に人を死亡させた罪」の事件遺族や、その未遂事件の被害者。

不同意性交・わいせつといった性犯罪も含む。

衆院法務委員会では、政府に十分な予算確保や、

支援弁護士の質の担保を求める付帯決議が可決された。」

 

2年以内に施行ということなので、2026年までに施行される見通しです。

 

現行法のもとでも、法テラスによる被害者支援の規定はありますが、

主に資力がない人に限定されていたり、内容も法律相談や民事裁判の

一部費用の立替、一般的な情報提供といったように限定されています。

改正法により、上記記事のように、早い段階からの支援が可能となったり、

利用要件が緩和されました。

 

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相続登記の義務化

今月(令和6年4月1日)から、相続登記が義務化されました。

相続登記とは、亡くなった方(被相続人)から不動産を相続した際に

必要となる不動産の名義変更のことです。

 

義務化された理由は、

『相続登記がなされないため、登記簿を見ても所有者が分からない

「所有者不明土地」が全国で増加し、周辺の環境悪化や公共工事の阻害など、

社会問題になっています。

この問題解決のため、令和3年に法律が改正され、

これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。」

(東京法務局のホームページより)

 

相続登記の義務化により、相続人は、不動産を相続で取得したことを

知った日から3年以内に、相続登記することが義務となりました。

遺産分割によって不動産の所有権を取得した場合には、

遺産分割された日から3年以内に相続登記をすることが必要となります。

正当な理由がなく相続登記しない場合には、

10万円以下の過料が科せされる可能性があります。

相続登記の義務化は、令和6年4月1日ですが、

これより以前に相続した不動産も相続登記がなされていないものは、

義務化の対象となりますので、注意が必要です。

令和6年4月1地により前に相続した不動産は、

令和9年3月31日までにする必要があります。

 

上記のように、相続登記が義務化されたものの、

例えば、遺産分割が長引くなど、決められた期間内に登記申請できない場合

もあります。

このように、早期に遺産分割をすることが困難な場合に備えて、

「相続人申告登記」という制度が設けられました。

この「相続人申告登記」は、戸籍などを提出して、

自分が相続人であることを申告するといった簡易な手続きです。

この手続きは、①相続人が複数人いても単独で申請できることや、

②期限内に利用すれば、相続登記の義務を履行したとみなされることに

メリットがあると言えます。

ただし、相続登記とは異なりますので、放置しておくと、

売却ができないなど様々なリスクが生じることになります。

そのため、遺産分割が完了した場合など相続登記できるようになった際には、

きちんと相続登記をすることをお勧めします。

 

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三重県でもこの週末、桜が満開となるところが多かったようです。



破産手続きにおける債権者平等原則とは?

自己破産に関する相談を受けていると、

「知人からお金を借りているが、知人だけはこのまま返済していくので、

破産から外したい」などと言われる方がいらっしゃいます。

知人に迷惑をかけたくないという気持ちは分かりますが、

自己破産手続きをとる場合、このように知人の方だけ返済を続ける

ということはできません。

 

破産手続きにおいては(個人再生手続きでも同様)、

「債権者平等原則」というのが定められています。

「債権者平等原則」ては、同じ債務者に対し、複数の債権者がいる場合、

すべての債権者を公平・平等に取り扱ったり、

債権額に応じた弁済を受けるべきであるという原則です。

ここでいう「債権者」には、貸金業者のみならず、個人も含まれるため、

知人等であっても、金銭を借りているということであれば、

当該知人も債権者に含まれることとなります。

そのため、たとえ知人であっても、破産手続きをとる場合、

知人だけに返済することは許されないこととなります。

知人からの借入金も破産債権として破産手続きにおいて

処理されなければなりません。

 

仮に、自己破産手続き中にもかかわらず、知人にのみ返済を続けた場合は

どうなるのでしょうか。

特定の債権者にのみ返済する行為は「偏頗弁済」に当たります。

偏頗弁済を行った場合、免責が許可されないことにもなりかねません。

また、破産管財人が「偏頗弁済」と判断すれば、

破産管財人が返済された金銭を回収することになりますので、

いったん返済を受けたにもかかわらず、

債権者である知人は破産管財人に返さなければならないことになりかねず、

余計に迷惑をかけることになりかねません。

 

ただし、自己破産しても免責されない債権(非免責債権)については、

手続き中に支払っても、債権者平等原則に反することはありません。

例えば、税金などの公租公課、養育費などが非免責債権に該当します。

 

202402いただきもの.jpgのサムネール画像   202402頂き物.jpg

写真は、依頼者様からいただきましたお菓子です。

弁護士・スタッフみんなで分けて、おいしくいただきました。

ありがとうございました。



刑事裁判・控訴審判決宣告期日への出頭義務

刑事訴訟法第390条は、

「控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。

ただし、裁判所は五十万円以下の罰金又は科料に当たる事件以外の事件に

ついて、被告人の出頭がその権利の保護のため重要であると認めるときは、

被告人の出頭を命ずることができる。」と定めています。

そのため、第一審の時とは異なり、

被告人は、控訴審の期日へ出頭する義務はありませんし、

実際、保釈中の被告人が控訴審の期日に出頭しないことはありました。

しかし、被告人が判決期日に出頭しないと、様々な問題も生じました。

そこで、令和5年5月に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律により、

制度が変わりました。

刑事訴訟法390条の2が設けられました。

同条は、「…、控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている

被告人であって、保釈又は勾留の執行停止をされているものについては、

判決を宣告する公判期日への出頭を命じなければならない。

ただし、重い疾病又は傷害その他やむを得ない事由により被告人が

当該公判期日に出頭することが困難であると認めるときは、

この限りでない。」と定めています。

つまり、重い疾病や傷害などの事由がない限り、保釈されている被告人は、

控訴審の判決宣告期日に出頭する義務が課せられることとなったのです。

 

実際、法改正後の刑事裁判の控訴審の際、

裁判所から控訴期限等の書類が届いた際、注意書きとして、

判決期日への出頭義務が記載された用紙が同封されていました。

法改正の前、控訴審の際、「控訴審は出頭しなくても構わない」と説明

してきましたが、これからは「判決期日には必ず出頭するように!」と

説明しなければ弁護過誤に問われかねません。

 

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写真は先月県外の裁判所に出廷した際に裁判所近くで撮影したものです。

裁判所は、市役所や城跡近くに建てられていることが多いですよね。

三重県内でも、津地裁や四日市支部、伊勢支部などは市役所や城跡近くにあります。



大麻使用罪

今日は仕事始めです。

弁護士の観点から大きな改正点を1つ挙げたいと思います。

昨年12月、麻薬取締法と大麻取締法が改正されました。

これまで、覚醒剤については、所持も使用も禁止されていたのに対し、

大麻について所持は禁止されているものの

使用について罰する規定はありませんでした。

今回の改正法では、これまで規制されていなかった大麻の使用も禁止され、

使用罪について7年以下の懲役と定められました。

また、単純所持罪について、これまで5年以下の懲役だったのが、

7年以下の懲役に厳罰化されました。

ただし、大麻草から抽出した成分を含む医薬品で、

安全と有効性が確認されたものは使用が可能になります。

 

今年は元日から能登半島の地震があったりしました。

被災された方々は想像できないぐらい大変な思いをしていらっしゃると

思います。

自分に何ができるのか考えたとき、

ふるさと納税で寄付ができるということを知りました。

これまでの豪雨災害などでもあったらしいのですが、恥ずかしいことに、

今回の地震で初めてこのような制度があることを知りました。

直接、被災地に届くかと思うと、良い制度だなと思い、

私も少しですが、ふるさと納税させていただこうと思います。

 

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相続放棄をする際の注意点

被相続人にプラスの財産がなくマイナスの財産(負債等)しかない場合や、

そもそも相続手続きに関与したくない場合などの理由で

相続放棄を検討されているとき、注意をしなければならない点があります。

 

まず、相続放棄の手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する

家庭裁判所に申述を行う必要があります。

例えば、相続人が三重県津市に住んでいても、被相続人が三重県松阪市

に住んでいたら、津家庭裁判所松阪支部に申し立てることになります。

相続の相談の際、相続人間で「私は相続しません」と言えば、

相続放棄したことになると考えていらっしゃる方や、

手続きを何もしなければ相続しないと考えていらっしゃる方が

まだまだいらっしゃいます。

必ず、裁判所で手続きを行う必要があるので注意してください。

 

相続放棄の手続きを行っても、相続放棄ができないケースがあります。

相続放棄できないケースには

①書類の不備

②熟慮機関の経過

③単純承認が成立する場合

が挙げられます。

 

①書類の不備については、家庭裁判所に指摘されたら直ぐに

補充するなどすれば大丈夫ですので、すぐに対応しましょう。

②熟慮機関の経過については、原則として相続放棄が受理されません。

しかし、熟慮期間がけいかしていても、経過してしまったことに

やむを得ない事情が認められる場合には、

相続放棄が認められることがありますので、

弁護士等の専門家に相談してみてください。

③単純承認とは、被相続人の財産の全部または一部を処分したとき

などが該当します。

単純承認をしていると、相続することを認めたこととなりますので、

それに反する相続放棄は認められなくなります。

しかし、この場合であっても、やむを得ない事情などがある場合には、

単純承認行為の後でも相続放棄が認められる場合もあります。

実際、先日、被相続人の財産を一部処分してしまった後でしたが、

相続放棄の申述を行ったところ、

無事に相続放棄申述が受理されたケースがありました。

事情によっては、相続放棄が認められることもありますので、

相談されることをお勧めします。

 

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中弁連シンポ

先月は、中部弁護士会連合会定期弁護士大会シンポジウムに出席のため、

三重県桑名市にあるホテル花水木に行ってきました。

シンポジウムのテーマは、

「犯罪被害者による損害賠償請求の実効性確保

 ~債務名義の取得、債務名義に基づく回収に向けて~」

アンケートでは、アンケートを回答してくださった先生方のうち、

任意の支払いで全額回収できた事案が3割弱ということで、

なかなか回収が難しく、他の先生方も悩まれているんだなと。

基調講演では、前兵庫県明石市長である泉先生にご登壇いただきました。

泉先生の熱意に圧倒されまくりでした。

市長時代には、いろいろとマスコミなどにも取り上げられた方のようですが、

被害者支援や子育て支援に対する思いは強く、

講演を拝聴していると、本当に強い信念を持たれ、

それを実行しようとしたんだな、と思えてきます。

また、加害者にも配慮をし、加害者を生まない街づくりというのも

印象的でした。

また、パネルディスカッションでは、お子様を犯罪により亡くされた

遺族の方が登壇され、胸の内を語ってくださる場面がありました。

身につまされる思いがして、聞いていて涙が出そうになりました。

加害者からは1円も賠償金が支払われていない現状。

加害者は現在、社会に出て普通に生活している様子。

やりきれない思いを聞いていると、本当につらくなりました。

 

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写真は会場となったホテル花水木のロビーの天井です。

ライトがかわいらしかったです。



一度も返済していない場合の債務整理

最近、債務整理の相談を受けていると、

借入したばかりで1度も返済をしていない債権者が存在するといった

ケースが何度かありました。

確かに、債務整理できないこともありません。

しかし、かなり困難となりますので、必ずしも債務整理が成功するとは

言い切れません。

 

任意整理の場合

任意整理は、債権者である金融機関と返済方法について交渉を行い、

示談を進めていく手続きになります。

そうすると、債権者が同意しない限り、示談が成立しないため、

任意整理をすることができません。

一度も返済していない場合、詐欺ではないかと疑われてしまいますし、

そもそも返済に対する信用性がないため、

なかなか分割返済に応じていただけないケースが多いように思います。

 

自己破産の場合

上記のとおり、一度も返済していない場合、詐欺ではないかと

疑われてしまいます。

支払い不能状態であるにもかかわらず、

新たな借り入れを行うことは免責不許可事由にも該当するため、

自己破産手続きを行っても、免責が不許可とされ、

支払義務が残る可能性があります。

ただ、裁量免責というものがあり、裁判所に事情を説明するなどし、

免責不許可事由があるものの、裁判官の判断により

免責許可を出してもらうこともあります。

そのため、一度も返済していない債権者がいる場合、

裁量免責を目指して申立てを行うこととなります。

裁量免責が出されたとしても、債権者によっては、

返済が一度もないことを理由に異議申し立てをしてくることがあります。

もし、異議が認められた場合、当該債権者への支払い義務は残りますので、

注意が必要です。

 

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