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内縁の妻の借家権相続の可否

内縁の夫Aが死亡した場合、内縁の妻は、

内縁の夫が借りていた建物に住み続けることができるのでしょうか。

内縁の妻には相続権がないことから問題となってきます。

 

 (1)Aに相続人がいない場合

居住用建物の賃借人が相続人なくして死亡した場合において、

その当時事実上夫婦関係にあった同居者は、

その賃借人たる地位を承継すると定められており(借地借家法36条)、

内縁の妻は、そのまま建物に住み続けることができます。

 

 (2)Aに相続人がいる場合

この場合につき、最高裁昭和42年2月21日判決は、

賃貸人との関係で相続人の賃借権の援用を認め、

その居住の権利を認めています。

賃貸人と相続人とが賃貸借契約を合意解除した場合には、

賃借権の援用が認められないものとなり問題となりますが、

この点につき、当該解除は信義誠実の原則に反しないような

特段の事由がある場合のほかは援用者に対抗できないとする

裁判例もあります(東京地裁昭和63年4月25日)。

すなわち、相続人と賃貸人とが内縁の妻に対する嫌がらせ等の目的で

賃貸借契約を合意解除しても、

内縁の妻はそのまま住み続けることができます。

これに対し、相続人の賃料不払いによって賃貸借契約が解除された場合には、

内縁の妻は保護されません。

別の法律構成を考える必要性が生じてきます。

 

疑問に思われたり、悩まれたりすることがありましたら、

弁護士等の専門家にご相談ください。

 

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