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特別縁故者に対する相続財産分与申立

相続人捜索の公告の申立期間が経過するなどして、

相続人の不存在が確定した場合、

ただちに相続財産が国庫に帰属することになるわけではありません。

相続人の不存在が確定した場合、

特別縁故者から相続財産分与の申立がなされ、

家庭裁判所が相当と認めるときには、

残存している相続財産の全部または一部が

当該特別縁故者に与えられることになります。

 

この特別縁故者とは、

 (1)被相続人と生計を同じくしていた者

 (2)被相続人の療養看護に努めた者

 (3)その他被相続人と特別の縁故があった者

と民法に定められています。

ただし、これは例示にすぎないとされています。

被相続人の意思を尊重し、被相続人と縁故者との血族関係の有無、

生前における交際の程度、被相続人が恩恵を受けた程度等、

家庭裁判所の個々具体的な判断、裁量によって、

特別縁故者に当たるか否か決められることとなります。

 

たとえば、(1)に該当する類型としては、内縁の配偶者だったり、

事実上の養子、継親子などが挙げられます。

また、(2)に該当する例としては、

遠距離にもかかわらず、多数回にわたり、老人ホームや病院を訪ねて、

被相続人の療養看護や財産管理に尽くし、

死後は相当額を負担して、葬儀屋供養を行った被相続人の叔母の孫が

特別縁故者に該当するとされました(大阪高決平成20年10月24日)。

 

ここで、成年後見人であった者の特別縁故者に該当するか

問題となるケースがあります。

成年後見人には、被後見人の身上監護義務があるため、

特別縁故者として認められるためには、

成年後見人としての職務の程度を超えて被相続人の療養看護に尽くしたと

評価される必要があります。

また、成年後見人として報酬を受領している場合には、

分与すべき財産を判断するに当たり、

報酬として受領した金額を考慮に入れるべきとも考えられます。

 

成年後見人のほか、職業的に療養看護にあたっていた者

(例えば、看護師や家政婦など)も(2)に該当するか問題となります。

この場合、対価(正当な報酬)を得ている以上、

対価以上に看護に尽くしたなどの特別の事情のない限り、

(2)に該当するとは言えず、原則として特別縁故者とは認められません。

 

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